
A+ 面白い
A ↑
A-
B+
B 普通
B-
C+
C ↓
C- つまらない
『評価』
A(演技5/演出4/脚本5/撮影4/音響4/音楽4/美術3/衣装3/配役4/魅力4/テンポ4/合計44)
『評論』
アカデミー主要3部門(作品、脚本、編集)を獲ったという事もあり、「とりあえず、観とくか」というノリで鑑賞した作品です。
前半3,40分までは、予想通りのストーリーというか、人種差別をベースに進行していく暗い話に、些かウンザリしながら観ていたのですが、徐々に、その様を変えて行き、物語に引き込まれ少女の透明マントの話では号泣してしまいました。
終わってみれば、かなり心に残る作品で、鑑賞して良かったと思います。
恐らく、この作品って好き嫌いがはっきり別れる作品だと思うのですが、個人的に共感できる部分があったり、ラストで全ての話が繋がる様が爽快でけっこうお気に入りの一本です。
さて本作の内容ですが、複数のドラマが同時に展開していくオムニバス形式のような映画です。

しかしながら、それら複数のドラマ、登場人物が交差し、関連し絡み合っている様は見事です。
また、ある事故を起点にその事故の前日より、複数の話が平行して進んでいくのですが、登場人物も多いですし、混乱しがちなのですが、観客を混乱させないように配役や簡潔なストーリ等、配慮をみせつつも、伝えたいメッセージはしっかりと伝えていて、良く考え練られていた作品ではないかと思います。
この映画のテーマはタイトルにもあるように「クラッシュ」で、事故を起点に、人種間の衝突だったり、人と人の心の衝突だったりを描いています。人種間というと黒人と白人を連想しがちですが、アラブ系だったりアジア系だったり、アフリカ系だったりと多種多様な人種差別がある訳で、そういう人種間の差別って、我々にはあまりピンとこない問題なのですが、本作を観る限り、差別というものがアメリカ社会に根強く影響を示しているのがよく解ります。

また、本作においてのテーマは衝突なのですが、個人的に、本作を観て強く感じたのは、人間の持つ二面性という点です。
例えば、人種差別をしていたマッド・ディロン演じる白人警官ライアンが、命をかけて黒人女性を救出したり、反対に、人種差別を否定するライアン・フィリップ演じる白人警官ハンセンは、ヒッチハイクで乗せた黒人の若者を撃ち殺してしまったり・・・
アラブ人として差別されるペルシャ人のショーン・トーブ演じるファハドも、結局ヒスパニック系のマイケル・ペニャ演じるダニエルを差別して逆恨みしてしまいますし・・・
結局、人間というものは危害を加える加害者に成り得る事も、被害に遭う被害者に成り得る事もある訳で、そういう危険性についても警告しているような気がしました。

ちなみに、個人的に本作を観て一番印象に残っている話は、前述にもありますが、少女の透明マントの話です。
ネタバレになりますが、マイケル・ペニャ演じるダニエルは、銃声に怯える娘の為に銃声の聞こえない治安の良い土地に移り住んできたのですが、それでも銃声のような音がする度に娘はベッドの下に隠れます。
そこでダニエルは、透明マントの話を娘にします。
透明マントの話とは、ダニエルが娘とおなじ5歳の時、妖精に出会い何も貫き通さない透明マントを貰ったという話です。
だから、自分は今まで無事に生きてきたのだという事、そして自分の娘が5歳になった時に、娘にその透明マントを譲らないといけないという事を説明して透明マントを娘につけてあげます。

それから娘は銃声を怖がる事はなくなったのですが、ある時、逆恨みしたペルシャ人にダニエルが家の前で銃を突きつけられます。
父親を迎えにでた娘は、その現場を目撃し、透明マントの無い父親を守ろうと父親の盾になるという話です。
私にもこの少女と同じくらいの娘がいるので、感情移入してしまい、胸がしめつけられるほど切なくて・・・
単純に人間同士の衝突というテーマの他に、幾重にも感じられるメッセージ性がこめられている本作について、いろいろと考えさせられる点があり、鑑賞して良かったなと思います。
『内容』交通事故を起点に人間同士の衝突、人種間の衝突等様々な問題を扱った人間ドラマ。
・有能な黒人刑事グラハム(ドン・チードル)が巻き込まれた交通事故の近くで発見された黒人男性の死体・・・
・アラブ人と間違われるペルシャ人のファハド(ショーン・トーブ)が、自ら経営する店を強盗により滅茶苦茶にされ・・・
・若い黒人のアンソニー(クリス・”リュダクリス”・ブリッジズ)とピーター(ラレンツ・テイト)は、強奪した車で韓国人男性を轢いてしまい・・・
・白人警官のライアン(マット・ディロン)は、パトロール中、自らのやり場の無い怒りを黒人夫婦にぶつけて・・・
・その人種から差別されるダニエル(マイケル・ペニャ)だが、良いパパで銃声におびえる娘に透明マントの話を・・・
等、数々のドラマが交差して・・・
『配役』ジーン/サンドラ・ブロック
グラハム/ドン・チードル
ライアン巡査/マット・ディロン
リア/ジェニファー・エスポジート
フラナガン/ウィリアム・フィクトナー
リック/ブレンダン・フレイザー
キャメロン/テレンス・ハワード
アンソニー/クリス・”リュダクリス”・ブリッジズ
クリスティン/サンディ・ニュートン
ハンセン巡査/ライアン・フィリップ
ピーター/ラレンズ・テイト
ダニエル/マイケル・ペーニャ
カレン/ノーナ・M・ゲイ
シャニクア/ロレッタ・ディヴァイン
ディクソン警部補/キース・デヴィッド
ドリ/バハー・スーメク
『監督』 ポール・ハギス
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